生活習慣病の増加で注目される血管治療のIVR

動脈硬化や動脈瘤を切らずに対処


 そもそもIVR(アイ・ブイ・アール)は、1964年に米国オレゴン州の放射線科医ドッターが、動脈硬化で細くなった女性の足の動脈をカテーテル(血管の中を通すチューブ)で広げたのが始まりです。血管治療は、IVRの最も歴史ある領域になります。人口の高齢化や、糖尿病や高血圧といった生活習慣病の増加により、動脈硬化や動脈瘤(りゅう)など血管の病気を抱える人が増えている中、ますますIVRにかかる期待は高まっています。

おなかを切らずに血管の詰まりやコブを治す

 生活習慣病の増加に伴い、動脈硬化の患者さんが増えています。動脈硬化が進むと手や足の血管が狭くなり、手足にさまざまな障害を起こす閉塞(へいそく)性動脈硬化症や、血管がコブのように腫れて破裂の危険が生じる動脈瘤が起こりやすくなります。

 こうした場合、手術では胸やおなかを切って、悪い血管を自分の別の血管や人工血管に置き換える治療が行われますが、IVRでは局所麻酔で、体にメスを入れることなく治療できるのです。

風船や網状金属で血管広げる

 閉塞性動脈硬化症に対するIVRは、狭くなったり詰まったりしている血管をバルーン(風船)や網状の金属の筒(ステント)で広げ、血流を良くする血管拡張術と呼ぶ治療法です。

 治療成績も従来の手術とほぼ互角。年間に約6万本のステントが使われていることから分かる通り、この切らずに治す治療を求める人は右肩上がりに増えています。

 血管の太い上の方の動脈ほど治療成績は良くなるため、早い段階で見つけて治療することが大切ですが、足切断を宣告されながらIVRで救われた方は枚挙にいとまがありません。

治療1~3時間、入院5日

 場所の難易度にもよりますが、治療時間は1~3時間程度。治療の翌日には歩け、従来の手術では2週間は必要な入院期間も、5日くらいです。

 治療時の傷口が小さいため治療後の感染症の心配もほぼなく、全身麻酔が不要、集中治療室(ICU)での管理の必要がないことなどから、トータルで考えると医療費も安くなると言えるでしょう。

 この治療は、首の血管である頸(けい)動脈に対しても行えます。頸動脈が狭くなると脳梗塞のきっかけになるため、高血圧などリスクのある人は、超音波検査で詰まりの程度を調べてみることをお勧めします。

人工血管でコブの破裂防ぐ

 血管のコブである動脈瘤に対しては、ステントグラフトと呼ばれるステントで内貼りされた人工血管を折りたたみ、カテーテルで血管内から患部に運んで装着する治療法(ステントグラフト留置術)が普及し始めています。

 開発されてから比較的日が浅く、ステントグラフトの耐久性もまだ10年程度のデータしか出ていません。しかし、従来の手術をした場合に危険性が高い70歳以上の方や、大きな手術を敬遠する患者さんを中心に件数が増えています。また地域差も是正され、今ではどこの地域でも受けられる治療になりつつあります。

 閉塞性動脈硬化症に行う血管拡張術に比べると治療時の傷は大きくなりますが、やはり局所麻酔で、足の付け根を2センチほど切って血管を出すだけなので、手術に比べると圧倒的に体の負担は少なく済みます。入院期間も、治療前を含めて計10日前後と短期間のため、より早い社会復帰が可能です。

 ステントグラフト留置術では治療を行う医師の経験・技術が結果を左右するため、関連する10の医学会で構成される日本ステントグラフト実施基準管理委員会を設置し、厳密な審査を行った上で、指導医や実施医を決定しています。同委員会の公式サイトに実施施設などが公開されているので、参考にしてください。

http://stentgraft.jp/pro/facilities/

リスクの高い人は血管の状態を調べて相談を

 なお、これらの治療では血液をさらさらにする「ワルファリン」という薬は中止して「ヘパリン」という薬に変更する必要がありますが、その他の同系統の薬は飲み続けられます。

 今後、高齢化が進み、生活習慣病の増加が予想される中で、血管を治療するIVRの対象者はさらに増えると見込まれています。

 体に優しいIVRは誰もが受けられる治療です。糖尿病や人工透析を受けている人などリスクが高い方は特に、医療機関で手と足の血圧を比べるABI検査や超音波検査で血管の状態を調べてもらい、異常が指摘された時は専門医に気軽にご相談ください。

吉川 公彦 先生(奈良県立医科大学放射線医学教授)



IVRって、なに?

がん診療のさまざまな場面で活躍するIVR

外傷の治療としてのIVR


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更新日: 2015年6月4日

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