がん診療のさまざまな場面で活躍するIVR

がん診療のさまざまな場面で活躍するIVR ~治療だけでなく苦痛の緩和も~


 さまざまな医療の分野に活躍の場を広げているIVR(アイ・ブイ・アール)。日本で最大の死亡原因となっているがんの領域でも、診断、治療、痛みの軽減などを行うために欠かせない技術になってきています。

正確な診断の一助に

 CTやMRIなどの画像装置の進歩により、体の外から病気の存在を指摘することは可能になりました。しかし、正確にがんと診断し、適切な治療法を決定するためには、直接細胞を採取して調べる必要があります。

 IVRの技術を使えば、画像を確認しながら「がんが疑われる場所」の細胞組織を素早く的確に取り出すことができるため、さまざまな場所に発生するがんについて精度の高い診断を行うことができるのです。

切らない治療なのに手術と同じ実力

 治療への進出も目覚ましく、特別な治療ではなく保険医療として標準的に行われているものも増えてきました。

 代表的なのが肝臓がんに対する「ラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法」や腎臓がんに対する「凍結療法」です。超音波やCT、MRIでがんの位置を確認しながら、皮膚の表面から特殊な針を刺し、ラジオ波と呼ばれる電磁波でがん病巣を直接焼いてしまうのがラジオ波焼灼療法。凍結療法は逆に、高圧のガスでがん病巣を凍らせて死滅させるものです。

 例えば、肝臓がんの治療は、がん病巣を手術で切り取るのが基本です。しかし、ラジオ波焼灼療法を適切に行うことのできる状態の肝臓がんの場合には、(1)体を切らない、(2)局所麻酔で可能、(3)治療時間も1~2時間程度で体の負担が少ない、(4)針を抜いた後も縫わなくてよい、(5)入院期間も数日程度―といった利点があるにもかかわらず、手術と同じくらいの治療成績が得られます。

 今のところ健康保険が使えるがんの種類は限られていますが、肺がんや骨への転移など、幅広いがんへの応用が期待されています。

がん細胞に直接抗がん剤を注入する方法も

 また、カテーテル(血管の中を通すチューブ)を利用したがんの治療法もあります。画像を見ながらがん病巣の近くまで血管をたどり、挿入したカテーテルからがん病巣に直接抗がん剤を注入する「動注化学療法」は、少ない量の薬で高い効果が期待できる方法です。

 さらに、がんに栄養を送っている血管だけにカテーテルで小さな粒子を詰めて血流をストップさせ、“兵糧攻め”にする「動脈塞栓(そくせん)術」は、肝臓がんや他のがんが肝臓へ転移した場合などにも高い効果を示します。

 このような、直接がん病巣を刺して行う治療や、血管からがん病巣をたたくという2つの治療法は、体を切ることなく効果的にがんを治療する方法として、今後もいっそうの普及が予想されています。

がんによって起こる症状にも対応

 IVRががんの領域で活躍しているのは、診断や治療の分野だけではありません。

 例えば、がんの患者さんを悩ます症状の一つに「痛み」があります。がんが骨に転移して骨が弱くなってしまった場合、鎮痛剤を使っても痛みを完全に、特に体を動かした時の痛みをなくすのは、難しいのが現状です。

 IVRでは、X線(レントゲン)などの診断装置で痛みのある骨の位置を確認しながら、骨セメントと呼ばれる樹脂を注入して骨の強度を高めることで、痛みの原因を取り除きます。

 治療は、針を刺す部分に局所麻酔をして行うだけで、傷も小さく、治療時間、入院期間ともに短く済む上に、治療の翌日に効果が出ることも少なくありません。また、仮に完全に痛みが取り除けない場合でも、必要な鎮痛剤が少なくなりますので、鎮痛剤による副作用や医療費の面でも、良い結果につながることが多いようです。

 このほか、おなかに水がたまる「腹水」を防ぐ方法や、鼻からチューブを入れておくことが必要な患者さんに、首のところから食道に直接チューブを入れて、鼻のチューブをなくしてしまうなど、IVRはがん自体の治療だけではなく、がんによって起こるさまざまな体の異常な状態を元に戻し、患者さんの苦痛を和らげることにも貢献しています。

荒井 保明 先生(国立がん研究センター中央病院院長)



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