多彩な働き方

地域間の違いもD&I:青森県IVR医の取り組み

掛端伸也、掛田伸吾(弘前大学医学部付属病院 放射線診断科)
「今回、青森県のIVR診療と我々の取り組みについてご紹介します」、との書き出しですと、多くの方はお決まりの医療過疎、僻地医療など惨憺たる現状報告を想像するかもしれません。しかし、今回ご紹介するのは、医療資源の少ない地方に限定されない話題です。「赤信号地域はどこにでもある」です。 我々は青森県の津軽地方の診療に従事していますが、将来への不安はさておき、日常のIVR診療で困窮することはありません。実際のデータでも、青森県IVR専門医1人当たりがカバーする人口は112,544人で、全国23位と中段に位置します(図1)。
青森県での医師偏在化
そんなある日、我々は行政の方から目から鱗のお願いを受けました。その内容は、「青森県での医師偏在化は全国ニュースになりますが、それ以上に深刻なのは県内での医師偏在化の問題であり、これに取り組んで頂けませんか」・・・この一言が県内のIVR事情を考える機会となりました。 まずは青森県の地図を眺め。ちなみに、先ほど全国23位と申しましたが、青森県は、IVR専門医1人当たりがカバーする面積は877㎢と全国ワースト9位です(おそらく居住地面積単位でも)(図2)。
様々な偏在化要因
これは単なる人口密度ではなく、居住区の点在化による医療資源の分散を意味し、偏在化要因のひとつになっています。視覚的に認識しやすいように「IVR専門医を医療財源とした場合の産科危機的出血への標準的治療」とのテーマに限定し、交通環境、気候環境(積雪)を加味したマップを考えました。青森県内のIVR専門医11人のうち7名(うちIVR学会代議員4名)が弘前大学付属病院のお膝元である弘前市、2名が県庁所在地の青森市に勤務していますので、結果は図3(青信号、黄色信号、赤信号で表示。注:筆者らの独自調査で作成)となります。青森県の医療圏は青森市、弘前市、八戸市の中核都市からなりますが、八戸市は真っ赤です。活気のある工業都市ですが、IVR専門医は2名しかおらず、八戸市周辺で唯一の地域周産期母子医療センターに認定されている八戸市立市民病院には、IVR専門医は不在です。他の都市との往来を陸路で考えた場合、八甲田山が立ちはだかるため物理的にも難しく、特に夜間の積雪時は不可能です。
安心な医療提供における対策
市民に安心な出産を、というモチベーションから対策を考えました。中長期的な継続性を考え、まずは連携を模索することにしました。注目したのは救急診療で全国的に有名な八戸市立市民病院。早速、事業管理者、病院長に相談を行いました。具体的には救命救急センター(野田頭達也センター長)との連携で、県全体のIVR支援連携のプラットフォームとしての青森IVRカンファレンスを立ち上げました。簡単な取り決めとしては、全ての診療科が対象(主に救急科、放射線科)、10年後を見据えて世話人は45歳以下、三位一体の参画(医師、診療放射線技師、IVR担当看護師)、若手中心の症例検討・相談、ウエブもしくはハイブリッド開催(コロナ禍もあり)。名簿は全員で共有し、誰しも自由にIVR相談を行える環境となっています。和気あいあいと月一回(2021年12月までに計14回)開催しています(図4)、現在では会員40名弱となり、青森県の主なIVR症例の共有ができるようになりました。今後も継続してIVRの輪を広げ、将来的にはIVR専門医増、IVR学会の会員増につながればと考えています。

2022年は他の地域との交流も進めていく予定ですので、もしゲスト出演を依頼されましたら何卒よろしくお願いいたします。D&Iでも考えて頂きたい課題としましては、非中核病院の勤務、僻地診療を余儀なくされている若手医師のIVR取得における環境整備でしょうか。今後も取り組みの効果など随時報告いたします。