Q:どのような子宮筋腫に対して子宮動脈塞栓術を行うのですか?
Q:どれくらいの期間入院するのですか?
Q:具体的な治療法について教えて下さい
Q:治療後にはどのように症状がよくなるのですか?また子宮筋腫は小さくなるのでしょうか?
Q:子宮動脈塞栓術で起こりうる合併症について教えて下さい
Q:治療に伴う放射線被曝が心配ですが?
Q:治療にかかる費用はどのくらいでしょうか?
Q:治療がうまくいかないことはあるのでしょうか?

Q:どのような子宮筋腫に対して子宮動脈塞栓術を行うのですか?
A:原則として、子宮筋腫の症状(過多月経、月経痛、貧血、腹部腫瘤の自覚など)がある患者さんがまず対象となります。また子宮を摘出したり筋腫のみを摘出するような外科的治療を望まない方にも行うことがあります。その他、閉経前であること、妊娠していないこと、子宮筋腫以外に感染症や悪性の病気がないことなどがこの治療を行う条件となります。また治療の際に使用するヨード造影剤や、ゼラチンからできている「ゼラチンスポンジ」など塞栓物質に対する重篤なアレルギーがないことも条件です。
Q:どれくらいの期間入院するのですか?

A:病院によって若干の違いがありますが、およそ2泊3日程度であり、原則として手術による入院期間よりは短いと考えて下さい。ただし治療後に発熱が続いたり、下腹部の痛みがよくならない場合は入院期間が延長されることがあります。

Q:具体的な治療法について教えて下さい
A:足の付け根にある動脈(大腿動脈)周囲に局所麻酔を行い、その部位に数mm大の切開を入れ(この傷は術後しばらくするとほとんどわからなくなります。)、細い管(カテーテル)を動脈内に入れて行います。そのカテーテルから子宮周囲の血管形態を調べるための造影剤という薬を注入しながら、子宮筋腫を栄養する子宮動脈まで進めます。そこから筋腫を栄養している動脈をつめる「ゼラチンスポンジ」を注入します。( 子宮動脈は左右に1本ずつあるため、各々の血管から「ゼラチンスポンジ」を注入します。)なお大多数の施設では、この「ゼラチンスポンジ」を用いて筋腫をつめていきますが、施設によっては異なる種類の塞栓物質を使用しています。
Q:治療後にはどのように症状がよくなるのですか?また子宮筋腫は小さくなるのでしょうか?
A:個人差がありますが、月経過多の減少や、これによる貧血の改善が期待できます。また月経痛の軽減や、筋腫による圧迫感やこれによる頻尿や便秘などあれば、それらの軽減も期待できます。子宮筋腫の小さくなる程度についても同様で、画像でほとんど判らなくなるほど小さくなる筋腫もあれば、あまり小さくならない筋腫もあります。ただし筋腫が完全に塞栓されてしまえば、少なくとも大きくなることはありません。
Q: 子宮動脈塞栓術で起こりうる合併症について教えて下さい
A:(1)下腹部痛:筋腫に栄養する動脈をつめると、下腹部痛(重い月経痛の様な感じ)が術中、または術後から発生してきます。これに対し、鎮痛薬を点滴や坐薬などの方法で投与します。また、痛みをあまり感じないようにする鎮静薬の投与も術前から点滴などにて投与します。一般的に痛みは術後1~2時間が最も強く、6~12時間ほど比較的強い痛みが続きます。また、その後も軽度の痛みが1週間ほど残ることもあり、その場合は退院後、坐薬や経口の鎮痛薬にて様子を見ていきます。(2)発熱、感染症:治療後は、発熱、白血球上昇などの、炎症反応が見られます。これについても消炎・鎮痛剤などでコントロールします。ただし、強い感染症やゼラチンスポンジ注入による正常子宮内膜損傷の合併を認める場合は、子宮摘出を行わないといけない場合もあります。(3)卵巣機能低下:子宮と卵巣を栄養する動脈は細い血管で交通しており、ゼラチンスポンジの一部が卵巣側に流れる場合があります。これが両側卵巣に顕著にみられると、卵巣機能の低下や閉経が早まる場合もあります。これについては術後に血液検査で卵巣ホルモンの値をフォローしていきます。(4)子宮筋腫以外の塞栓:術中に塞栓物質が子宮動脈から逆流することで、膀胱や直腸、坐骨神経障害などが生じる場合もあります。(5)下肢静脈血栓症、肺梗塞:血管造影手技全般における合併症ですが、稀です。(6)アレルギー:造影剤、ゼラチンスポンジによるアレルギーが遅発性でも起こる場合があります。(7)穿刺部の血腫、感染:重篤になることは稀です。
Q:治療に伴う放射線被曝が心配ですが?
A:特に卵巣の被曝が心配になると思われますが、この種の検査、治療の中では決して長時間ではない手技です。平均的な子宮筋腫塞栓術であれば、卵巣の被曝量は耐容できる放射線量より低いというデータの報告がありますので、まずは心配することはないでしょう。もちろん、術者も撮影回数をできるだけ少なくするなど、被曝をできるだけ抑える工夫をしています。
Q:治療にかかる費用はどのくらいでしょうか?

A:現時点では保険が使えないため、自費診療で40万円程度かかります。ただし、施設により多少異なります。

Q:治療がうまくいかないことはあるのでしょうか?
A:筋腫を栄養する動脈が非常に細く、カテーテルを進められなかった場合は、そこで手技は終了となります。この場合、経過観察していく際に細かった子宮動脈が発達して子宮筋腫を再び栄養する場合があり、この場合は再UAEになる可能性があります。その他、手技中にカテーテルなどで子宮動脈を損傷してしまうことも稀にあり、そうなると損傷した血管の先にある筋腫まで塞栓物質を注入することができなくなり、途中で終了しなければならないこともあります。また、子宮動脈以外の血管から筋腫が栄養されていた場合や血管の走行が複雑であったりすると、やはりうまく塞栓できない場合があります。