祖母が背骨の圧迫骨折をした後の痛みで苦しんでいます。セメントを入れる治療があると聞きましたがどんな治療でしょうか?
Q:どうやってセメントを入れるのですか?
Q:どうして痛みに効くのですか?
Q:どのような状態に効きますか?
Q: 効果は?
Q: どれくらい時間がかかりますか?
Q: 痛みが取れるまでにかかる時間は?
Q:どんな副作用、合併症がありますか?
Q:入院期間はどれくらいですか?
Q:治療後の生活で気をつける事は?

Q:どうやってセメントを入れるのですか?
A:検査台に腹ばいで寝ます。消毒をしたのち、局所麻酔を行い、背中からX線透視(テレビ)やCTを用いて正確に針を誘導し、正しい位置に来た事を確認して、外に漏れないように注意しながらセメントを入れていきます。


左:胸椎の骨折が見られ、非常に強い変形を来しています(矢印)。
右:骨セメントを注入しているところです。黒いところ(矢印)がセメントです。

Q:どうして痛みに効くのですか?

A:骨折により不安定になった骨をセメントにより補強する事により痛みが軽減するといわれています。また、セメントが固まるときに熱(70度前後)を発しますが、その熱により神経を麻痺させる効果、セメントに含まれる成分による神経麻痺効果痛みを抑える理由と考えられています。

Q:どのような状態に効きますか?
A:骨粗鬆症(こつそしょうしょう:骨のカルシウムが減る状態)による圧迫骨折が原因の腰痛に対して行われます。その他、種々の骨腫瘍や骨転移などの痛みにも有効と言われています。骨折自体による痛みに効果があるので、いわゆる神経痛(腰が原因の足の痺れなど)には効果がありません。治療を行う前に痛みの種類と原因を良く調べ効果が期待できると判定したときに行います。
Q:効果は?
A:全体として90%以上の方に何らかの効果があると言われています。
特に50%では全く痛みが無くなるとされ、残りの方も痛み止めが必要なくなる、あるいは減らす事が出来るなどの効果があります。治療を行う前より症状が悪くなる事はほとんどありません。
Q: どれくらい時間がかかりますか?
A:使用する機械にもよりますが、おおむね1時間位かかります。治療する場所が増えればそれに応じて時間がかかります。
Q:痛みが取れるまでにかかる時間は?
A:約1週間以内にほとんどの方で効果が現われます。
早い人では、検査の最中に痛みが取れたとおっしゃる方もいます。
治療の後、一時的に針を刺した部分が痛むことがあります。通常2-3日で良くなります。
Q:どんな副作用、合併症がありますか?

A:ほとんどの合併症はセメントが周囲に漏れる事によって起こります。
脊柱管という、脊髄が通る場所に漏れると麻痺やしびれ、痛みなどの神経症状が起こり、場合によっては手術で取り出さなければなりません。幸い、注意深く観察しながらセメントを注入すれば、症状が出るほどの量のセメントが漏れる事は非常に稀です。セメントが血管に入り、肺などにとんでしまう塞栓症も起こる可能性がありますが、やはり非常に稀です。整形外科の手術の際にセメントによると思われる急激な血圧低下などの全身症状が起こる事が数年前、新聞などでも話題になりました。体内に入ったセメントにより血管が拡張する事が原因と推察されていますが、はっきりした事は分かっていません。経皮的椎体形成術では手術で使用するよりはるかに少ない量(10分の1程度)で治療できますので、そういった副作用が起きる確率は低いと言われています。その他、感染、出血など針を刺す事自体による副作用が起こりえます。

Q:入院期間はどれくらいですか?
A:治療翌日にでも退院は可能で、実際欧米では外来で治療を行っている施設もあります。しかし、治療後痛みが一時的に強くなるような事もあり、通常1週間位入院をして頂いています。
Q:治療後の生活で気をつける事は?
A:特にありません。しかし、痛みが無くなった事で返って無理をして治療した以外の背骨を骨折してしまう事があります。基本的には骨が脆弱になった方への治療ですので、それなりの注意が必要です。